【初心者向け】代替休暇制度導入の労使協定で定めるべき内容は?
社会保険労務士の山口です。
令和5年4月1日より中小企業においても「月60時間を超える法定時間外労働に対して50%以上の割増賃金支払い義務」が課されることとなります。この改正には、「引き上げ分の割増賃金を支払う代わりに有休の休暇(代替休暇)を付与することが認められています。
この「代替休暇」制度導入に際し締結する必要がある労使協定で定めるべき内容について解説します
◆労使協定で定めるべき事項
労使協定書に定めるべき事項は次の4点。
- 代替休暇の時間数の具体的な算定方法
- 代替休暇の単位
- 代替休暇を与えることができる期間
- 代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
それぞれの事項について一つずつ見ていきます。
◆代替休暇の時間数の具体的な算定方法
厚生労働省は下記の協定例を示しています。
【協定例】
1 代替休暇の時間数は、1ヶ月60時間を超える時間外労働時間数に換算率を乗じて得た時間数とする。
2 前項の換算率は、代替休暇を取得しなかった場合に支払う割増賃金率●●%から代替休暇を取得した場合に支払う割増賃金率▲▲%を差し引いた■■%とする。また、会社は代替休暇を取得した場合、取得した時間数を換算率で除した時間数については■■%の割増賃金の支払いを要しない。
※第2項後段で、代替休暇取得時には相当分の割増部分を支払わない旨を明記しておきましょう。
◆代替休暇の単位
厚生労働省は下記の協定例を示しています。
【協定例】
代替休暇を付与する単位は1日または半日とする。この場合の半日とは、午前(●時から■時)、午後(▲時から▼時)の○時間とする。
※半日とは原則として1日の所定労働時間の半分ですが、午前と午後で所定労働時間数が異なる場合には、その時間を半日とすることができます。
◆代替休暇を与えることができる期間
厚生労働省は下記の協定例を示しています。
【協定例】
代替休暇は、賃金計算期間の初日を起算日とする1ヶ月において、60時間を超える時間外労働を行った者のうち、半日以上の代替休暇を取得することが可能な者が取得の意向を示した場合に、当該付きの末日の翌日から2か月以内に与えられる。
◆代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
厚生労働省は下記の協定例を示しています。
【協定例】
会社は、労働者から代替休暇取得の意向があった場合には、支払うべき割増賃金額のうち代替休暇に代替される賃金額を除いた部分を、通常の賃金支払日に支払うこととする。ただし、当該月の末日の翌日から2ヶ月以内に代替休暇が取得されなかった場合には、取得されないことが確定した月に係る割増賃金支払日に残りの割増賃金を支払うこととする。
※代替休暇取得の意向を確認する期日も定めておくと良いでしょう
◆早めの準備、制度設計を
代替休暇制度導入後の運用は大変煩雑となります。早めの準備、制度設計をしておくことをおすすめします。
◆関連記事はこちら
→「代替休暇とは?制度の内容や導入にあたって会社がすべきこと」(第一グループHP)