2023.05.29
お知らせ
【今更聞けない】退職金の前払いには社会保険料はかかる?
社会保険労務士の山口です。
弊社顧問先の社長より、「退職金をやめて在職中の給与で手当として支給する」との報告を受けました。退職後にお金を渡すよりも今現在の従業員の給料生活を充実させてあげたいとのことでした。
◆退職金は社会保険料労働保険料の賦課対象外
ところでいわゆる退職金(退職を事由として退職時に支払われるもの)は労働の対象ではないため、社会保険料及び労働保険料の賦課対象とはなりません。
◆退職金の全部または一部を給与や賞与に上乗せして前払いする場合には
労働の対象として社会保険料及び労働保険料の賦課の対象となります。
→厚生労働省「いわゆる退職金の前払いに係る社会保険料の取り扱いについて」(H15.10.1)
→厚生労働省和歌山労働局「労働保険の算定基礎となる賃金早見表」
◆退職金前払いについてのメリット・デメリットを見極めて導入を
退職金前払いを導入すると、下記のようなメリットが考えられます。
- 退職給付債務の軽減・・・退職金は退職時にまとまった額を支払うための財源の確保が必要となるため、どの企業でも大きな課題となっています。
- 求人の際の給与表示面で有利・・・給与額について退職金前払い分を上乗せして表示できます。
- 労働者の手取り増加・・・増加分を貯蓄・運用することにより退職金よりも多くの老後資金を手に入れることができるかもしれません。
一方で下記のようなデメリットが考えられます。
- 社会保険労働保険料・所得税増加・・・在職中に支払う場合、社会保険料労働保険料及び所得税が発生します。
- 制裁としての「退職金減額」を失う・・・就業規則等により懲戒解雇時に退職金減額を定めている場合には制裁の度合いが弱まります。